今季1号で今季1勝

 次々と浴びせられる祝福のハイタッチに、最高の笑顔で応えた。ファンも、チームメートも待ちこがれた1発。二岡の移籍第1号アーチが、試合を動かし、今季初勝利を呼び寄せた。「ホームランもよかったですけど、チームが勝てたことがよかった。少し泳ぎ気味だったけど、しっかり打てました」。
 1点を追う5回だ。唐川の変化球に体勢を崩されながらも、バットをしっかりとコントロール。左中間スタンドへはじき返した。これまで何度も回った東京ドームのダイヤモンド。昨年までとは違う仲間が待つベンチに戻ると、「さすが(東京ドームの)打ち方を知ってるな」と冗談で迎えられた。梨田監督は「スイングは緩く見えるけど、それで飛ぶのが二岡の特長」とニヤリ。続く7回にも大量点につながる安打を放ち、初猛打賞も記録した。
 新天地での船出は、我慢の連続だった。右足の不安を考慮され、別メニューでの調整が続いた。キャンプでは1人サブグラウンドでウオーキングやスキップから始まる“リハビリ”。たまるストレス。夜間は1人ウエート室の鍵を借り、元気な上半身をいじめてジレンマを解消した。
 順調に回復はしたが、オープン戦は1度も守備に就くことができなかった。だが、照準は開幕戦ではなく、シーズンを通して働ける体づくり。焦りはなかった。不安はそこではなく、一向に調子の上がらない打撃面に関してだった。
 絶対的に少ない打席数を補うべく、全体練習や試合後は、ブルペンにこもって打撃練習を繰り返した。ロッカー室では、オープン戦で2本のホームランを放ったルーキー大野のヘルメットに、自分のバットをかざしてこすりつけた。「これでオレも打てるようになるかな」。プロ11年目、巨人で通算157本塁打を放った二岡が、プロ入りわずか数カ月の新人にすがり、験を担いだ。冗談半分の気持ちはある。だが、苦しんでいたのは紛れもない事実だった。
 楽天との開幕3戦目。初タイムリーを放った第2打席で感覚がよみがえった。「ファウルを打ってる感じがよかった。それが今日につながったと思う」。陰で重ねる地道な努力が、実を結んだ。「チームが勝つことが一番。それに貢献していければいいなと思います」。09年日本ハム初白星と同時に、二岡の新たな挑戦も幕を開けた。

ドームラン上等w
3連敗中だったチームの初勝利に貢献できたのがなによりでした。